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たっぷりと
時間をかけたキスのあと
鼻先が触れ合うような距離のまま
温人さんが気遣わし気に言う。
「何がお前を不安にさせてる?」
温人さんは優しい。
優しくて、いつだって私を
私の一挙手一投足を
私の何気ない言葉を
心から気にかけてくれている。
私の心と体を
すべてを守ろうとしてくれる。
そうか……。
彼の中で私はまだ
世界で誰より不幸であると
ただ嘆き逃げていた
悲劇のヒロインのままなんだ。
ダメだ。
それじゃいけない。
情けなさに
奥歯を噛みしめて決意する。
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