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駆けてくる勢いのまま
温人さんの首に腕を回し
彼の両頬に唇を寄せるマダム。
私は失礼にならないよう
顔をわずかに俯けたまま
目だけで黙って見届けるしかなかった。
胸元が大きく開いたドレス姿で
温人さんにしなだれかかるマダムは
まるで恋に浮かれる少女のように
キラキラと輝いて見えた。
昨日魔女のように感じた人と
同一人物にはとても見えない。
彼女はどんな姿にでもなれるのか。
たくさんの魅力的な顔を持ち
どんな男でも虜にしてしまう
その存在自体がすでに
魔法のようだと思った。
彼女だけが使える
誰にも逆らえない魔法。
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