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温人さんの応答に
まだ満足いかないらしく
マダムの白く
ほっそりとした手が
甘えるように肩から
広い胸へとすべる。
まるで温人さんが
自分のものであるかのように
当然のようにネクタイを直す
その傲慢な手を叩き落としたい。
私はひとり
すこし後ろから
ぐっと両の手を握りこむことで
その衝動に耐えた。
『いまからでも遅くないでしょう?
たっぷりもてなしてちょうだい。
それより、そんな他人行儀な
喋り方はやめてほしいわ』
『大切なお客様ですから』
まるで動揺ひとつせず
にこやかに応対する温人さんを
つい憎らしく思ってしまう。
そんな自分が嫌になる。
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