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『あなたはひとときの恋を楽しんで
生涯独り身で過ごすのだと思っていたわ。
私と同じようにね。
だから私たち、気が合ったでしょう?』
過去の関係を
ほのめかすようなマダムの言葉。
脳裏に若い姿のふたりが
見たこともないのにリアルに浮かぶ。
それはプライベートな部屋の中だったり
美しいどこかの海辺だったり
車内という狭い密室だったり。
容姿端麗で
誰もがお似合いだと思うふたりが
仲睦まじく身体を寄せて
微笑み合い、キスをする。
そんな映像が
まるで映画のワンシーンのように
浮かんでは消えて
あるはずのない痛みをもたらす。
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