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それは予想以上の苦痛だった。
身体を半分引き裂かれ
もぎ取られるような。
正しく表現することは
とてもできないような苦しみ。
けれど動揺は
内に留めたまま
詰めていた息を吐く。
勝手な想像なんかで
いちいち心を
ざわめかせてはいられない。
いま温人さんの隣りにいるのは
目の前にいる彼女じゃない。
間違いなく、私なのだから。
そう私が
気を強く持とうとしたと同時に
まるで心を読んだかのように
温人さんが口を開いた。
『そういう生涯も
悪くないと思っていたことは
確かにありましたね。
けれど私のそんな考えを
軽々と覆してくれたのが彼女です』
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