試練

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◆ 『失礼いたします』 努めて冷静にと いつも以上に自分に言い聞かせ 私はその重厚な扉を開いた。 ここ、キングスイートの部屋に 足を踏み入れるのは 実は入社時見学した以来。 つまりお客様がご利用中に サービス目的で入室するのは はじめてのことになる。 ここはそう頻繁に 利用される部屋じゃない。 そういう特別な場所なのだ。 他の部屋では嗅いだことのない 甘いバラの香りに全身を包まれ 一瞬くらりと視界が揺れた。 これほど濃厚な香りは 彼女だからこそ 許されるものだと思う。
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