空想スケッチ

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
親にともなわれ新入生達が通り過ぎていく。みなあどけない顔つきをしている。近隣の小学校から進級した者達だ。晴れ晴れした笑顔を浮かべている。 そんな群衆の一人。制服のスカートの中に紺色のジャージのズボンをはいたジャージ少女。泡沫みなわ(うたかた みなわ)はごきげんだった。 中学に進級したことがうれしかった。新しい制服に袖を通したことがうれしかった。鼻歌を口ずさみながら母親とともに桜並木を歩く。 お気に入りの紺色のジャージのズボンはトレードマーク。母親が反対しようと聞く気はない。今日は新品をおろしてきた。 風が吹いた。桜の花びらが舞い散る。霞む視界。その彼方にスケッチしている少年を発見した泡沫みなわは好奇心をもった。 「何してるのかなん?」 次の瞬間、泡沫みなわは少年めがけ駆け出す。道行く人々を押し退け突き進む。のびるにまかせた長髪が風をはらんで揺れる。 「こらっ!! みなわ、あぶないでしょ!!」 後ろから母親の声がとぶ。 「わっ!!」 「あぶなっ!!」 道行く人々が悲鳴をあげる。しかし泡沫みなわは気にも止めない。一直線に少年目指す。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!