空想スケッチ

3/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「なに描いてるのん?」 不意に見知らぬジャージ少女がしゃべりかけてきた。夢幻うつつはスケッチしていた手を止める。 「見せて見せてん!!」 見知らぬ少女が腕にしがみついてくる。屈託ない笑顔。夢幻うつつは困惑する。ためらいながらもスケッチブックを彼女に見せる。 描かれているのは囓歯類(げっしるい)の面立ちをした手のひらサイズの精霊。桜の幹に隠れてこちらをうかがう姿。 それは最初に桜並木を見たときにうかんだイメージ。夢幻うつつは空想したイメージをスケッチしているのだ。 「それはね、桜並木の精霊。名前はさくら。女の子なんだ」 桜並木の精霊は桜の花びらの開花する時期にあらわれる。そして桜の花びらが散り落ちるまでのひとときを謳歌する。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!