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「なに描いてるのん?」
不意に見知らぬジャージ少女がしゃべりかけてきた。夢幻うつつはスケッチしていた手を止める。
「見せて見せてん!!」
見知らぬ少女が腕にしがみついてくる。屈託ない笑顔。夢幻うつつは困惑する。ためらいながらもスケッチブックを彼女に見せる。
描かれているのは囓歯類(げっしるい)の面立ちをした手のひらサイズの精霊。桜の幹に隠れてこちらをうかがう姿。
それは最初に桜並木を見たときにうかんだイメージ。夢幻うつつは空想したイメージをスケッチしているのだ。
「それはね、桜並木の精霊。名前はさくら。女の子なんだ」
桜並木の精霊は桜の花びらの開花する時期にあらわれる。そして桜の花びらが散り落ちるまでのひとときを謳歌する。
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