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「駄目です。フーリアさんの仕事は掃除だけだと言ったはずです。既に仕事を終わらせてあるなら、フーリアさんはもう休むべきです」 「……そう……ですか」 「じゃ、持ってきますね。テラスで待っていてください」  フーリアさんに頼んであるのは家の掃除『のみ』。それ以外の仕事は任せていない。こんな広い家を一人で掃除させておいて、他に料理や自身の世話なんかさせる雇い主の方がおかしいのだ。逆に感謝して恩返しをするのが普通だろう。 他の奴隷を雇う?二人食っていけるのがせいぜいな家計でもう一人雇うなんざ自殺行為に等しい。国の支給金が結構少ないことに絶望したあの日のことを忘れたりしない。  何がともあれ、自分のことぐらいは自分でなんとかするのが、普通ってものだと僕は思う。  他の生徒は小説の主人公みたく可愛がったり、戦力として育てたり、愛し合ったり。はたまた別の生徒は、胸くそ悪い悪役のごとく虐めたり、躾と言って暴力を振るったり、飽きたら殺したり。  そんなものはメイドとは到底言えない。  極論、メイドは主に忠誠心を抱かずに家事をこなせばそれで良いのである。だって、赤の他人なのだから。
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