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 馬車に揺られながら住宅区を進み、数十分が経った。揺れる振動が心地よくて微睡んでたが、ある一軒の豪邸に馬車が止まったので、名残惜しいが僕は降りなければならない。 「着きましたよ、勇者様」 「ありがとうございました」  そう言いつつポケットからコインを数枚取り出し、箱の中へ入れる。御者から「お金なんて勇者様からは取れません」と言われるが、人を送ることを生業としている御者に送ってもらったなら、お金を払うのは当然のことである。これは客の義務だ。別の世界だから、勇者だからといって甘えてはいけないだろう。「受け取ってください」とだけ言って、馬車から降りた。  馬車から降りてまず目にはいるのが、装飾が凝っている格子状の門と白い塀。白い塀は魔法で作られた物質で作られているらしく、とても固いらしい。僕から見たら石灰にしか見えない。  門の隙間から芝が敷かれた広い庭と吹き出す噴水、石レンガで舗装された道、そしてレンガで積み上げられて建てられたヨーロッパ調の豪邸が垣間見える。こんなん庶民感覚狂うわ。  正直、他の家はに泊まりに来ている感覚なので、寛ぐことが出来ない。早く日本に帰りたい。     
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