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「白坂……お前最近、何か良いことあった?」
久しぶりにこちらに出社してきた谷原が、不思議そうな顔で問いかけてきた。
良いこと……黒い瞳の優しげな眼差しが、一瞬頭をよぎる。
「いえ、むしろトラブル続きで参っているところです」
「悪いな。俺ももっとサポートできると思っていたんだが……向こうの対応も思ったより手こずっていてな」
基本的にこちらにいると言っていたはずだが、谷原は結局ここに週に1、2回しか来ることができず、来れば上への報告と他の案件の穴埋めに追われ、まともに会話をする時間もなかった。今日はそんな合間をぬって、わざわざ話しかけてきたのだ。
「いやな、みんなが言ってたんだ。白坂がずいぶん……優しくなったって」
何を言い淀んだのかは知らないが、周囲に当たりを強くしないように気を付けていたつもりだった。
「そういえば、ちょっと前までゆっきーの周りにはブリザードが吹き荒れていたが、だんだんとその雪が溶け始めてきたようだとも言っていたなあ」
「……誰ですか、それ言ったのは」なんとなく想像はつくが。
「企業機密だ」にやりと笑いながら肩を叩いてくる。酷い言われようだ。
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