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目を開いたときには、見知らない真っ白な天井が目に入り、しばらくぼんやりとした頭でそれを見つめていた。首をめぐらせると、同じような白色の布団と、その脇で顔を伏せる父の姿が目に入った。
あとのことは、よく覚えていない。僕を連れ出した男の顔立ちも、あの暗い瞳以外にはぼんやりとしか思い浮かべることができない。彼が何をしたかったのかはわからないし、僕は彼自身に恐怖を抱いていたわけではなかった。ただ、慌ただしく動き回る複数の大人たちと、憔悴した父と祖母の様子に、僕は自分が大きな失敗をしたことに気づき、幼いながらに恥じ入ることしかできなかった。夏休みが終わる前に僕は父の元へ帰ることになり、これまでの生活が戻ってきた。父もあの時のことを問いかけることは決してなく、僕も何事もなかったように過ごしていた。
閉ざされた空間に僅かな恐怖心を抱くことに気づいたのは、しばらく経った後だった。
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