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「上海の支社のほうから要請があって、急遽行くことになったんです。すぐに戻ってくると思っていたのですが、せっかく来たのだからとあれこれ押し付けられて――」
「子供でもあるまいし、怒る理由もない。毎日約束をして来ているわけでも、ここに遊びに来ているわけでもない」
彼の言葉を遮るように 言葉を重ねる。しかしまさに、自分の羞恥心を隠すために彼に八つ当たりをする、僕はそんな子供じみた行動をとっているのだ。心の奥底では、なにやっているんだと自分の幼稚さに舌を打つ。
「それに僕にそんな言い訳をする必要はないと言っただろう」
僕の言葉に、彼は困ったような笑顔になる。
「昨日俺が白坂さんのことを考えていたように、俺がいない間に白坂さんも俺のこと考えていてくれたかもしれないと思って」
そう以前と同じようなことを繰り返した。自惚れるなと言ってやりたい。そんなことを言うことなんてできないと、わかりきっているというのに。
「滞在が長くなると思ったときに、白坂さんのことを思い出して。連絡しようと思ったのに、俺は白坂さんのこと、何も知らないことに気づいたんです」小さく息を吐き出して言った。
「連絡先、教えてもらえませんか?」
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