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 全社で使用されている、とある古いシステムの運用は、変化を嫌がる上層部の意向により地味なアップデートの繰り返しで済ませていた。それを大きく改変しようという鶴の一声があったのが、昨年度の初め頃。それから慌ただしく調査や試作などの下準備を行い、いよいよ一部試運用となるところだった。もちろん僕もその実働部隊として動いていたわけだから、内情はわかっているつもりではある。  しかし、チームを動かすとなると話は別だ。彼はいつだって人々の心を掴んで、強引にでも成功に導いていくが、自分には逆立ちしたって同じことができるとは思えない。  とりあえず細かな打ち合わせは後日行うことになり、そのまま彼についてくるよう言われて歩き出す。  頭の中は既にプロジェクトのスケジュールがぐるぐると回り出していた。一体何から手をつければいい?打ち合わせはすぐにでも、ああ、でもまず自分の業務を整理しないと――  ぽすん  硬い紙の束の感触が、頭の上に乗ってきた。視線を上げると、彼は呆れた表情を隠そうともせずに僕に向けてくる。 「白坂、今からそう思い詰めなくても良い。ほとんどお膳立てはされているんだ。あとはうまく回るように体制を整えれば良いだけだ。」 「そうは言っても、いくらなんでもいきなりすぎでは……僕は谷原さんみたいに人を動かすのは得意じゃない。」 「だからだよ。お前は一人作業ならこの上なく完璧にこなすくせに、チームとなると途端にぎこちなくなる。」 「……」  頭上の書類を手にとり、今日何度目かの溜息をついた。
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