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しかし俺に宿を選ぶ余地はなかった。
「もう宿は予約してるんだ、さっきの契約の話をする前に予約済みだ!」
「はっ?」
ものっすごいいい笑顔で言うからツッコむタイミングを逃した。
「数ヶ月待ちだと言うからな、善は急げだろ?」
「何ヶ月前から予約してたんだよ!」
そんな素振り全然なかったのに!
「日本の中でもすげぇ老舗のリョカンらしいぜ、政治家や財界人しか来ないらしい。ホームページもないところみたいでな、人伝で探すの大変だったんだ」
それを聞いてサッと血の気が引く。
「何それ? 一体どこに行こうとしてんの?」
「リョカンさ!そのためにしっかり仕事したんだからな!」
しまいにエヘンと胸を張る。
俺の心配や不安をよそに。
「じゃあこのパンフレットは?」
どこにでもある普通の旅行のパンフレットだ。
とてもそんな高級宿のものではない。
「ああ、ただ参考にしただけで、ここには載ってないリョカンさ!」
「意味ねぇ!今の一連の会話もろもろ意味ねぇ!」
馬鹿らしくなってパンフレットをテーブルに置くと、そのまま抱きしめられた。
「やっと新婚旅行に行けるなハニー、式もしたわけじゃないから、これくらいしか新婚のオプションらしいことをしてやれない」
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