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「いや、それは別にいいけど……」
式も披露宴もやろうと思ってなかったし、新婚旅行なんて考えもしてなかった。
指輪だけで十分だってずっと言ってはいたんだけど、それじゃ彼の腑に落ちなかったのかな。
「お前と暮らし始めてから、本当に毎日楽しくて幸せだ。お前と出会えて本当によかった」
「それは俺だってそうだよ」
「ありがとう。愛してるよ」
「……うん」
体が熱くなる。仕事場だってこと忘れそうになるくらい。
「ハニー……」
「……ん」
そのまま、ゆっくり唇が重なり…。
そうになったところで部屋のドアが開いた。
「社長、来月の定例会の件ですが」
秘書サンだった。
慌てて立ち上がった瞬間に目が合ったけど、眼鏡越しの彼女の表情は変わらない。
「お取り込み中でしたか、失礼致しました」
軽く頭を下げたくらいで全く動揺しない。すごい。
俺なんか素っ裸見られたみたいにドキドキしてるのに、彼の方もご機嫌に笑ってるし。
「なぁに、大丈夫さ、見せつけてたんだ」
「そうでしたか」
「うちのハニーは本当に可愛くてなぁ」
「仲睦まじくて何よりです。それで来月の定例会の件ですが」
え、なんでそんな淡々としてるの?なんでなの?
彼と仕事し始めてから、本当に驚くことばかりだ。
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