遠くへ逝きたい。

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「こちらにサインをお願いします。後は案内状を発送するだけです」 「そうか、ありがとう。あとは頼んだぞ」 「お任せください」 秘書サンはホントにバリキャリって感じで、彼の一挙手一投足すべて先回りして片付けてくれてる。彼には他に30人近い秘書がいるけど、彼女はその筆頭だ。 「で、俺は明日からオフで大丈夫か?」 彼が、殊更緊張した様子で尋ねる。 俺はオフなんて聞いてなかったけど。 何も言わずに行方を見守ると、秘書サンは頷いてもちろんです、と答えた。 「足も手配済みです」 「ならよかった。君の仕事ぶりにはいつも助けられているよ。手配と仕事の調整は大変だっただろう」 「いえ。ご心配には及びません」 「1週間程度だが、君も家族とゆっくり過ごしてくれ」 「ありがとうこざいます」 俺には関係ない話だろう。退屈になって爪の甘皮を気にし始めたとき、とんでもないことを聞いてしまった。 「社長も奥様と素敵な新婚旅行を」 「はぁ?」 声を出す気もなかったけど、あまりにもおかしなことを言うから、思いっきり日本語で発声してしまった。 2人が俺を見る。すげー変な顔してぽかんと口開いてるのは自覚してる。でも今なんつった?
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