遠くへ逝きたい。

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彼は本当にお茶目な人だった。とにかく人を喜ばせようとする。自分が周りに支えられているってことをしっかり認識して、それを還元しようと努めてる感じっていうか。 その彼の愛情のほとんどを俺が享受しているんだろうけど、その愛情を目の当たりにするたびに、なんだか嬉しいような勿体ないような、すごくくすぐったい気持ちになる。 俺はこいつに何を返せてるんだろう。 たまにポッと心の中に浮かぶ靄。 俺は本当に貰ってばっかりだ。 「改めて乾杯しよう」 彼が俺の隣に座る。自然と腰に手を回された。俺も当たり前みたいに寄り添う。 軽めのシャンパンを持った彼のグラスと、静かにグラスを重ねた。 互いに一口酒を飲み、一息つく。 「やっぱりお前と飲む酒は最高だな」 穏やかに微笑む表情が本当に幸せそうで、靄なんか立ち所に吹き飛んだ。 「俺だって、お前のお手製シャンディガフ飲めて嬉しいよ」 でも大したことは言えない。まぁいつものことだけどさ。 「今日のために特訓したからな。お前だけのバーテンダーさ」 「贅沢だなぁ」 「もちろん。お前を愛するために惜しむものは何もないからな」 「ふふっ、バーカ」 グラスを掻き分けて唇を重ねる。キスも自然に出来るようになってきた。まだまだ足りないと思うけど、多少の愛情表現は出来るかなって感じ。 彼からの愛情表現の方が、もっとハッキリしてて激しい。
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