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そのまま仰向けになり、ぽけーっと天井を見つめていると、突然家のぼろい扉が引っかかりながら開く音がした。
何事?
俺はむくりと上体を起こし、未だ開くのに悪戦苦闘している人物を見つめる。
「このっ、どんだけ立て付け悪いのよっ!」
「あのぉ、こんなとこで何をしておられるのですか?」
「はあ?! 何初対面の人みたいな話し方してんのよっ! さっさと来なさい!」
「ひいぃ!! お助けぇぇ……」
「もぅ、女々しいったらありゃしないわね!」
その人物――レオナは、自身の結った二つの髪を鬱陶しそうに払いのけ、けしからん程に育った双丘の下へと腕を組む。
こいつは俺の幼馴染であり、この村の長の娘だ。
勝気で面倒見がよく、村中の人から愛される存在。
そんな性格だからこそ、こんな平々凡々な俺でさえも放っておけないらしい。
「仕方ねぇな。どっこらしょっとい」
「爺臭いわねぇ……もう少しシャキッとしなさいっ!」
「いでっ!」
身体中の骨が粉砕したのではないかと思う程の衝撃が背中に走り、玄関先で蹲る。
「情けないわね! ほら、立って」
レオナに腕を掴まれ、無理やり立たされる俺。気分は宛ら、
「もう無理だあああ!! 奴隷は嫌なんだあああ痛っ!」
「何回言わせたら気が済むのよ」
「あぃ……」
これもこの村の日常であり、この村の名物でもあるのだった。
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