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そう思い込んでも、私の震えは止まることなく、この悲しい現実を突きつけて、地獄への入り口へと誘われる。
その時、私の腕が――痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!
熱く、熱く燃える様に熱く、気が可笑しくなりそうな程の痛み。
突然の出来事に困惑、なんてする暇も無く、私は痛む左腕を右手で押さえ、泥に塗れることも厭わず地面へと膝から崩れ落ちる。
「はぁはぁはぁ、可愛いね……! いいよぉ! もっと苦しむんだっ!!」
男が擦る様に歩くことによって出来た水の波。それが私の顔に当たり、目に泥水が入り込む。
痛い。辛い。寒い。苦しい。
腕を抱えて蹲る事しか出来ない私は、赤く染まる泥水と、じりじりと寄ってくる醜悪の塊を震える瞳で見つめるのみ。
怖いよ、怖いよ、と心で幾ら叫ぼうと助けは来ない。
――不思議だな。つい先ほどまでは死をも受け入れていたのに、いざそれと対面してしまうと恐怖が顔を出す。
可笑しいなぁ、可笑しいなぁ。
瞳から流れ落ちる雫は、雨なのか、涙なのか。
私は目の前に迫る醜怪なそれに髪を掴まれ、
「はぁはぁ……あははははっ! 御対面だあっ!!」
水を吸った衣服を無理やりに――
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