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「私には絶対単独捜査するなって言っておいて、独りであの子に張り付いてたんですね。それとも完全に個人的な興味ですか?」
「いや、いやいやいや、見えたならわかるだろ、あいつがウチのマンションの下の駐車場で喧嘩してたんだよ。で怪我してたし・・・」
「え、怪我人とセックスしたの?最低」
「あ、それは見えないんだ。えー何がどう見えてるの?」
そう言われても上手く説明出来ない。見たくて見ているわけではないし、紅峰自身もこの不思議な知覚に悩まされている。それを呪うより役に立てようと思って刑事になり、実際何度も役に立っているが、事件の解決に辿り着いた経緯を説明する際に困ることは多々ある。
獅堂の質問を無視して紅峰はため息をついた。
「やっぱりああいうハッキリした顔のイケメンがタイプなんですね。私みたいな薄い顔じゃ物足りないですよね・・・」
「あ、いや、昨日のはその・・・お仕置きなんだよ。この前喧嘩した時今度やったら犯すぞって脅したんだけど懲りないからさあ・・・あの・・・ほんとごめん、俺テツのこと好きだよ?」
何を言っても軽く上滑りしてしまい獅堂は困惑したが、紅峰はその間に体を拭いて着替えを終え、独り窓辺に立った。すると破裂音が響いて斜め前方のビルが赤く染まった。
花火だ。
ここが花火大会の会場から遠くないことはわかっていたが、背後に高いビルがあり反対方向の通りに面しているのでこんな風に見えるとは想像していなかった獅堂はしばらく唖然としてビルに映る花火を見ていた。
その頭の中にいる人の顔を思い出しながら、紅峰も花火を見ながら呟いた。
「そうか。花火大会の前日だったからですか?」
「え、何が?」
「初めて私を抱いたの、49日の後だったでしょ」
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