3.欲望に忠実な男×都合のいい男

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「今日は花火大会終わるまで客来ねーかな。さっきの客は何してる?」 1人客が入った後全く動きのなくなった店の入り口を見張っていて早くも退屈してきた獅堂が尋ねると、紅峰は答えた。 「飲みに来たわけじゃないみたいです。この店、アクセサリーの販売もやってて・・・商品を受け取って代金を払って・・・もう出てくるんじゃないですか?」 紅峰がそう言った直後に、客は外に出てきた。若い男だ。アクセサリーを付けるような軟派な男には見えなかったが、たまたま今日は真面目な恰好をしているだけかもしれない。そう思いながら見詰めていると気配を感じたのか男がこっちを見てきて慌ててカーテンに隠れた。部屋の明かりはつけていないしバレてはいないと思いつつ注意して再び様子をうかがうと男は背後を気にしながら去って行った。恐らく容疑者とは別人だが、なんとなく動きが怪しい。 「なあ、アクセサリーってどんなやつだった?」 「長い鎖が見えたのでネックレスだと思いますけど・・・」 「ネックレスか・・・暇だしちょっと話聞いてくるか」 ネックレスと聞いて流史があの少年にプレゼントしたというネックレスが頭に浮かんでなんとなく落ち着かなくなった獅堂がそう言って立ち上がると、紅峰は黙ってついて来た。 「さっきのお客さんはアクセサリーを買いにいらしたんですか?」 既に刑事として面識のある紅峰が尋ねると、店主は答えた。 「ああ、さっきの客はリメイクですよ。飽きたからちょっと色変えて石付けてくれって・・・」 「へえ、面白いですね。どんなデザインですか?」 「えっああ・・・見ます?」 尋問というより単純に興味を持ったという優しい口調で紅峰が尋ねると、店主は注文書を見せてくれた。
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