3.欲望に忠実な男×都合のいい男

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それに添えられた加工前の写真を紅峰の背後から覗き込んだ獅堂は叫んだ。 「これ、さっきの客が持ち込んだのか?日付は?」 「えっ、ええ・・・日付はこれですけど・・・」 それを見た獅堂は店から走り出て行き、紅峰も慌てて後を追った。それは例の美少年の遺体が発見された日の翌日で、客がリメイクしたアクセサリーは天使の羽のモチーフのペンダントだった。もしかしたら流史が少年にプレゼントしたというペンダントではないか。そう思って必死に客を追いかけたが、花火の見物客で混み合う街の中を探すのは困難だった。 「ダメですね。店に戻ってもう一度店主に話を聞いて注文書をコピーさせて貰いましょう」 戻った時には店は花火に飽きて集まってきた客で賑わっていて、店主からはあまり話は聞けなかったが、注文書のコピーは入手出来た。 名前も住所も書かれているので獅堂は早速身柄の確保に向かおうとしたが、紅峰に止められた。 「それ程珍しいモチーフでもないですし、たまたま似てるだけかもしれません。せめて彼に写真を見せて確認して貰った後に・・・」 「いや、あいつに見せてもしそうだったら勝手に動き回って無茶なことしかねない」 そこで流史ではなく少年の母親に写真を見せて聞いてみると、そんなペンダントを持っていたような気がするが自信がないと言い、監視カメラに映ったあの客の顔には見覚えがないと答えた。 「やっぱり彼に聞いた方が・・・私が聞きましょうか?写真は見せずに細かい特徴を聞きながら絵を描いてみたら照合出来るんじゃないでしょうか」 確かに自分が聞いたらこのペンダントの持ち主についてうっかり聞き出されてしまう危険性があるが、冷静な紅峰なら上手く話を聞き出して貰えそうだ。 「そうだな。とりあえず連絡してみるか」
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