【15】黒沼の罠

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 氷動はベンチから体を起こし、アザミに向かって頭を深くさげた。 「無理すんな。傷に(さわ)るぞ」 「自分は……他の班員たちよりも力不足かも知れませんが『アザミ班』の一員として精一杯頑張ります。今後は遠慮なく鍛えてください」 「おいおい、ずいぶん謙虚じゃねぇか」 「アザミ班長と初顔合わせの時……」 「ん?」 「吐いた奴は初めてだと聞きました」  アザミは氷動の言い方に違和感を感じた。 「おい氷動、カギヤから俺の『ヒミツ』を聞いたって言ってたよな?」 「はい、アザミ班長が(まと)っている特殊なフェロモンは、男性相手に効果を発揮する。多少増量も出来ると」 「それだけか?」 「はい、それだけです」  そう聞いたアザミは、氷動の頬に厚い手のひらを添えると挑発的になで始めた。  体温を直に感じる部分から、ゾクゾクと甘く痺れるような感覚が急速に広がっていく。 「……っ!」 「俺のフェロモンは、男だったら誰でも反応するって訳じゃねぇんだぜ?」
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