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【11】ドクター・モグリ
一秒でも無駄には出来ない。
生死に関わらず、二人をこの場所から運び出す。
それが今すべき最優先事項だと考えたアザミはカギヤの生存も願いつつ、まずは手前に倒れている氷動から運ぶことに決めた。
氷動の傷に障らぬようアザミが慎重に抱きかかえて歩き出す。
すると細い道の出口を塞ぐように、マリネが車の位置を合わせた。
氷動を抱えるアザミが見えたので、出来るだけ負傷者を運ぶ距離を短くしようと考えての行動だろう。
すばやくマリネが降りてきて後部座席のドアを開けると、アザミは氷動を座らせてマリネに言った。
「腹を撃たれたようだ。応急処置を頼む。それと拳銃が入る大きさの袋を一つくれ」
袋を受け取り再び裏手へ戻り、今度は拳銃の回収とカギヤの救助にあたる。
カギヤのスーツに付着した血は乾いて黒に近い色になっており、傷だらけの顏は膨れ上がって何ヶ所も変色している。
頭部に触れると毛髪がまとめて濡れている部分があり、酷く殴られて出血したのだと分かった。
「カギヤは、撃たれちゃいなさそうだが……ここまでやるかね……」
アザミは冷たい声で呟くと拳銃を袋に入れ、落ちていた氷動の三段ロッドと共に上着のポケットへ突っ込み、カギヤを抱きかかえて車へと運んだ。
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