【11】ドクター・モグリ

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「私の病院なのに……私が秩序を乱してしまってはいけない」 「そうっスよ?」 「……くっ」  名医であっても、マリネの減らず口には勝てたことはなかった。 「……私は手術と治療をようやく終えて、疲れているんだ。君の冗談に付き合っている暇などない」 「ん~ボクと話すと、みんな元気がもらえるっていうスよ?」 「嘘はやめたまえ」 「結構、毒舌っスね。でも、そういうのも好きっス」  いたずらっ子のように笑うマリネを見て苦笑いしながらも、元気をもらった気もするモグリであった。  門久利(もんぐり)は、堅物という表現がふさわしい、曲がったことの出来ない誠実な男である。  子供の頃、テレビで医療現場の特集を観た彼は衝撃をうけた。 「苦しんでいる人々の助けになりたい」  ただそれだけの純粋な気持ちでコツコツ真面目に勉強を続けた結果、有名なS大学の医学部に現役合格。    優秀な成績で卒業後、外科医としてS大医学部附属病院に勤務。  そのS大病院で上司にあたる外科部長から、美しい一人娘を紹介されて結婚した。
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