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大柄な男と窓に挟まれながら「少し窮屈になりそうだな」とは思ったが、隣人の礼儀正しさに好感がもてたのであまり気にはならなかった。
それから門久利は何をするでもなく、ぼんやりしていた。
降りる駅も特に決めていなかったので、そのうち眠気が来たら眠ってしまおうと思っていたのだ。
隣の席の男は雑誌を読んでいる。
男がページをめくった時、フワリといい香りを感じた。
コロンだろうか?
門久利は、なんだか心地良くなってきた。
しかし次第に体がそわそわとして、落ち着かない感覚に覆われてきた。
あからさまに体温の上昇が感じられ、じんわりと全身に汗がにじみ出てくる。
思わずハンカチを取り出して顔を拭いた。
特に下半身が熱くなってきたと感じるのは、気のせいだろうか。
その様子に気付いた隣の席の男、アザミが門久利に声をかけた。
「どうされました?具合でも……」
「え!いえ、こういうことは初めてなので……少し疲れているだけだと思います」
「そう……ですか」
戸惑った様子で汗を拭いている門久利に、アザミは穏やかに言葉を続けた。
「もし窮屈なようでしたら、俺は席を変わりますので。ご遠慮なくおっしゃってください」
門久利は驚いたようにアザミを見た。
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