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「氷動、君は『96(キューロク)』という存在を聞いたことがあるかね?」
片岡の問いに対して、氷動は素直に「いいえ」と即答した。
「ならば結構。どんなに極秘にしても、どこからともなく流れ出て、噂になってしまうこともよくあるからな」
氷動は普段から犯罪や裏社会の情報に関して人一倍アンテナを張っている。
仕事に役立つのはもちろん、知識は自分の身を守る見えない鎧であり、多ければ多い方が良いという考えの持ち主だからでもあった。
そんな彼であっても初めてその名を聞く「96」。
それが捜査対象者をさしているのか、犯罪組織の名称なのか、新たな危険ドラッグのことなのか全く想像がつかなかった。
片岡が重い口を静かに開いた。
「『96』とは、警察組織が作った非合法な非公式チームだ」
「身内?」完全に警察とは逆の立場である存在の名称だと思っていた氷動はさすがに驚き、思わず出そうになった言葉をとっさに飲みこんだ。
「私は非合法と言った。勘違いはするな」
「はい」
片岡にたしなめられて氷動は察した。
どうやら片岡警視長は、こういうやりとりをするのが初めてではないらしい。
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