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門久利は、しなだれかかりながら楽し気に酌をしてくれる浴衣姿のアザミの色香に、思わず手が伸びそうになるのを強固な理性で抑えていた。
私は、恩人に対して何を考えているんだ!
しかし密着している部分から自分の激しい鼓動が伝わってしまうのではないかと心配になるほど、すでに門久利はアザミを意識してしまっていた。
「あ、あの、アザミさん……もう少しお互い離れて座りませんか?広いお座敷ですし」
「これは失礼!どうやら酔ってしまったようで……ご迷惑でしたね」
と、慌てて体を起こして離れようとした時、アザミの浴衣が乱れて胸元と太腿が露わになった。
門久利は思わずアザミの手を取った。
「いえ!迷惑だなんて!そうではありません!その……とても貴方が魅力的なので、あまり近づかれると」
「近づかれると……どうなるんです?」
アザミは、自分の手をつかんでいるモグリの手に唇を寄せると、そっとキスをした。
「……アザミさん」
門久利は思わず息を飲んだ。
人の温もりに飢えきっていた門久利は、アザミの艶やかな誘いを断りはしなかった。
男性との性行為は初めてだったが、今の彼にとっては問題ではない。
誰かを抱き締めて、誰かに抱き締められる。
伝わり合う体温の温かさが、すべてだった。
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