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カギヤを落ち着かせるために、シーツの上に置かれた彼の手をアザミの大きな手が覆うように包み込む。
「あの晩、何があったのか現場の状況から俺なりに『推測』してみたんだ。もし違っていたら、こんな風に俺の手に合図を送ってくれ」
そういうとアザミは、ポンポンと軽くカギヤの手を叩いてみせた。
「カギヤは任務の時、いつも自分の車は必ず自分で運転するよな?同乗者が後輩であっても。だがあの晩は、氷動がオメェの車のキーを持っていた」
アザミの声は穏やかながらも、業務的な淡々とした口調でもあった。
「撮影に使用した超小型カメラ、データをコピーした『食べ放題ちゃん』は車に先に積み込まれていたのに、二人はゲームショップの裏口で襲撃されていた」
アザミの手がポンポンと叩かれた。
「スーパ……大食いちゃ……」
「ああ、マリネの装置の正式名称は適当でいいや」
カギヤの懸命な訂正をアザミはスルーした。
「以上のことから考えてみたんだが、オメェは自分をおとりにして調査結果と車のキーを氷動に託し、先に逃がそうとしたんじゃねぇのか?」
アザミの手に包まれたカギヤの手が、ビクリとした。
「だが、コインパーキングに到着した氷動は、カギヤを置いて行くことが出来なかった」
カギヤの手が、あからさまにガタガタと震え出す。
「そして氷動は調査結果を車に積んだ後、再びゲームショップに戻っちまった」
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