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何もかも見透かしているようなアザミの言葉に、耐えきれなくなったカギヤが訴えた。
「ひどう……悪くな……僕を……助けよう……した……だけ……っ!」
カギヤの表情は包帯が巻かれているため分からないが、頬が濡れているようだった。
調査結果を届けず、カギヤを助けに戻った氷動に「96」から処分が下されるのではないかと恐れて、必死に彼をかばっているのだ。
「分かった。落ち着け」
アザミは、無理矢理起き上がりかけたカギヤの上半身を、なだめるようにベッドに戻した。
「あの晩、何が起こったのか、俺は事実確認をしているだけだ」
「う……ううっ……」
アザミは椅子から立ちあがると、低く優しい声でカギヤに言った。
「二人が手に入れた調査結果は、間違いなく俺がオヤジに渡した。つまりあの任務は無事完了しているんだ。安心しろ。よくやったな」
「班長……」
アザミからねぎらいの言葉をもらい、ようやくカギヤは気が抜けたようだった。
そして安心したところへ薬が効いてきたのか、そのまま寝息をたて始めた。
アザミは静かにカギヤの病室を出た。
病室の外の長椅子には楽し気なマリネと、数年老けたようなモグリが並んで腰かけていた。
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