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おそらく警察組織と違法な「96」を極秘に繋ぐ役目が、片岡警視長なのだろう。
「ここからは、私個人の意見として聞いてくれ」
そう断りを入れてから、片岡は淡々と話し始めた。
「現代は、すべてを白か黒に分類したがる者が増えすぎている気がするのだ」
声の地味さに反して、狭い部屋の中の空気が張りつめていく。
「例えば、自分が白…すなわち正しいと思うことなら、何を言ってもやっても構わない、それによって誰かが被害を受けたり、不幸になっても関係ないとでもいうかのようにな」
片岡の目の動きで発言を許可された氷動が、この部屋に入って初めて質問をした。
「つまり、時と場合によってはグレー……すなわち必要悪も存在すべきだと?」
「そうだ」と軽く頷き、片岡は氷動の言葉に続ける。
「なにも我々は私利私欲のために、法を犯す存在を作り上げたわけではない。そもそも法というものは、社会や人々の生活を守るためにあるのではないのか?」
特徴のない眼鏡の位置を軽く直した後、きっぱりと片岡はこう言い放った。
「その法をないがしろにして好き放題にやらかす悪党どもを『人間』だからというだけで、法を遵守して日々生きている『人間』と同等に扱う必要はないと私は思い続けてきた」
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