【12】命いらずの男

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 カギヤの病室のドアが開いた瞬間モグリは立ちあがり、マリネから逃げるようにしてアザミに近づいてきた。  アザミは頭を下げた。 「モグリ先生、心から礼を言わせてください。このたびは本当にありがとうございました」 「貴方がた『96』は、私の腕を信用してくださった。それに報いることができたのならば良かった」  と、モグリは嬉しそうに微笑んだ。  もう彼はアザミと出会う前とは比べ物にはならないくらい、一流の医師としての風格を感じさせている。 「じゃあ、次は氷動の病室だな」  するとモグリが、氷動の傷について自分の体を指さしながら説明を始めた。 「氷動君は腹部、この辺りに射創(しゃそう)がありました」  射創とは銃で撃たれた際に出来た傷のことである。  どうやら右脇腹あたりのようだ。 「弾は短く斜め外側に向かって抜けていたので傷痕は二つになってしまいましたが、大きな血管も損傷していないし、むしろ幸いでした。体力もありそうですから治りも早いかと」  モグリは「ただし」と一言付け加えた。 「安静にしていた場合ですからね?」 「ええ、分かりました」
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