【12】命いらずの男

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 アザミに気付いた氷動が、起き上がろうとする。  それをカギヤの時のように制して上体を戻させると、やはり先程と同じようにベッドの隣りの椅子に腰かけた。  モグリの話しによると氷動は腹部を撃たれていたが、その他に目立った外傷はないとのことだった。  今見た限りでは会話をしても支障はなさそうだな、とアザミは思った。  氷動が体勢を戻した際、アザミから少し距離をとったことに気付き、 「ん?俺の『ヒミツ』誰かから聞いたのか?」 「はい。カギヤさんから」  それを聞いたアザミは楽し気に笑った。 「だったら話は早ぇな。初顔合わせの時のようにフェロモン全開にはしてねぇよ。常に体に纏わりついている分は仕方ねぇけどさ」  怪我をしていつもより弱っている状態でアザミに会ったら、初顔合わせ以上の過剰反応が出るのでは、という一抹の不安が氷動にはあった。  しかしアザミが言う通り、多少落ち着かない気持ちにはなったものの、それほど体に変化は起こらなかった。  痛み止めの薬が効いていることもあり、全身の反応が鈍っているのだろう。 「久しぶりだな。初顔合わせ以来か?」 「……はい。このたびは申し訳ありませんでした」  相変わらず表情のない氷動の美しい目に、長い睫毛(まつげ)が伏せられる。
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