【12】命いらずの男

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「とんだ初任務になっちまったなぁ」  アザミが軽い口調で続ける。 「だが、綺麗な顔が無事で良かったじゃねぇか」 「その代わりカギヤさんが……」  ゲームショップの裏手で見た、血まみれのカギヤの顔を思い出したのだろう。 「ああ、そうだったな。今言うのはちょいと不謹慎だったか。悪ぃ」  アザミが失言したのか、わざと言ったのか、氷動には判断出来なかった。 「作戦に関する任務が終わるごとに、班長である俺に報告を上げてもらうことになっているんだ」  その言葉を聞いて氷動はアザミを見た。  どうやら本題のようだ。 「本来なら今回の報告は先輩であるカギヤから聞くんだが、今アイツは口の中をやられちまってる。報告は無理な状況でな」  そう言うとアザミは、氷動の足の辺りをシーツの上から軽くトントンと指で叩いた。 「代わりにオメェからあの晩、何があったのかを報告してもらえるか?」 「はい」  フェロモンの影響のないアザミは、問題なく上官の姿として氷動にも見えた。  氷動は表情を変えることなく淡々と報告をした。
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