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おおまかな筋は、アザミの推測通りであった。
そして氷動の報告は、主観も言い訳めいた言葉も含まない事実だけを詳細に述べたものであったため、現場にいなかったアザミも当時の状況を完全に把握することができた。
「間違いないな?」
「はい」
「よし。それじゃ最後の質問だ」
「はい」
「なぜカギヤを助けようと戻った?」
氷動が信じられない言葉を聞いたかのように、目を見開いた。
「仲間が危険だったら当然じゃないですか」
そう言うと自分を落ち着かせるように一呼吸置いてから、さらに氷動は続けた。
「班長は、調査結果を届けることを最優先させるべきだったとでも?」
「ああ、そうだ。オメェはカギヤの指示に従って、調査結果を届けるべきだったんだ」
氷動の質問に対して言葉を濁すこともせず、はっきりとアザミは言い切った。
「カギヤさんの命より、調査結果が大事だと言うんですか?」
「……どうやらまだ表の世界にいた警官時代の感覚でいるようだな。今のオメェは、もう『96』のメンバーなんだぜ?」
それを聞いた氷動は、ゆっくりと上半身を起こした。
痛みを感じたのか美しい顏が思わず歪む。
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