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「……オメェ、なんか勘違いしてねぇか?」
「さすがに、ここまで命が軽視されている世界だとは思いませんでしたが」
嫌味や皮肉を込めている声には聞こえない。
「任務内容には班員の命以上の価値があるのだと、改めて気付かされました。それだけ重要な任務を『96』は任されているということですよね」
淡々とした口調と美しすぎる顏は、まるで人間を模して作られた精巧なロボットのようにもアザミの目には見えた。
「おい、氷動」
「優秀な力を貸して欲しいと言われました。それなのに正体が露見したら闇に葬るとも」
「おい」
「逆を返せば『都合のいい捨て駒の寄せ集め』ってことですけど、別に自分はそれでもいいと思っ……」
バシッ!
アザミが氷動の頬を強く平手で打った音が、病室に響いた。
「……」
白く明るい室内に重い空気が満ちる。
「だったら『96』にも、俺の班にもいらねぇよ」
アザミの表情は、今までの彼からは想像できないほど厳しかった。
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