【13】最後のキス

3/11
前へ
/244ページ
次へ
 マリネの冤罪主張をスルーして、アザミはモグリに頭をさげた。 「先生、ありがとうございました。二人への聴取が完了したので戻ります」 「そうですか、お疲れさまでした」  アザミは苦笑した。 「先生の方が、よっぽどお疲れじゃないですか。今度メシでも行きましょう」 「ええ、ぜひ」 「じゃあ、ボク予約しとくスね。三名分」 「君も来るのか!」  マリネの言葉に思わずモグリが叫んだ。  そんな病院での賑やかなやりとりとは正反対に、帰りの車内は静かだった。  氷動の病室から戻ってきたアザミの様子から、マリネもさすがに何かがあったと感じ取っていたようだ。  後部座席のアザミがボソリと低い声で言った。 「なぁ」 「はい」  ハンドルを握っているマリネが、正面を見たまま答える。
/244ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1484人が本棚に入れています
本棚に追加