【13】最後のキス

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「もしもオメェが氷動のような外見だったら、どんな風に生きてると思う?」 「ん~お笑い要素抜きで、真面目に答えていいスか?」 「おう、それで頼むわ」 「そうスね……『96』には入らないス。表の世界でモデルとか俳優して、もてまくりの華やかな生活して、金持ちのパトロンを何人も捕まえて豪遊して、人生を謳歌(おうか)してると思うス」 「そう思うよな。俺もそう思ってた」 「でも氷動くんは違った。そう言いたいスか?」 「まぁな。アイツは今までの人生、楽しくなかったようだ」 「ん~生まれた時からあんな美貌を毎日鏡で見ていたら、持ち主はそれが当然になるから、ありがたみが分からなくなるもんじゃねスか?」 「ああ、そいつは確かに言えてらぁ」  そう返事をしながらも、アザミは引っかかっていた。  表の世界では使えない自分の実力をフル活用したいから、大金が欲しいからなどではない。  あれだけ仲間を助けたいと思う気持ちを強く持ちながら、自分自身の命にはまったく価値を感じていない様子であった。  アザミはケータイを取り出した。 「おう、オヤジ。今、モグリ病院の帰りなんだが、ちょいと時間とれねぇか」  相手は片岡警視長だった。  アザミはこう続けた。 「初顔合わせの時の氷動の資料。悪ぃがもう一回見せてもらえねぇか?」
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