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その翌日の夜。
モグリからアザミに連絡が入った。
「お疲れさまです。先生どうしました?ああ、メシの件だったら良い店が」
そこまで言いかけたアザミの言葉を、慌ただしくモグリが遮った。
「氷動君が……病室からいなくなりました」
アザミは驚きはしたものの、それ以上に「やっぱりな」という気持ちの方が強かった。
「申し訳ありません……私が気付くことが出来たら良かったのですが……」
自分を責めているようなモグリに、アザミが優しく落ち着いた声でなだめる。
「先生は治療が仕事です。いなくなったのは本人の意志ですから、先生が責任を感じることではありませんよ」
「アザミ班長……」
「分かる範囲で結構です。状況を教えていただけますか?」
「は……はい!」
モグリの気持ちを楽にしてから事務的に話を進めることで、アザミは正確な情報を得ることに成功した。
「モグリ先生、この件を俺以外に話しましたか?」
「いえ、最初に貴方に連絡しました」
「それでいい、ありがとう。他言無用でお願いします。あ、それと、今度食事に行く時は、店で一番美味い酒をご馳走させていただきますよ」
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