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「はい、楽しみにしています。それでは」
アザミ班長と氷動君にとって、多少なりとも自分の言動が役に立てたのなら良いのだがと、モグリは願いながら受話器を置いた。
氷動君はこのまま戻って来ないのだろうか。
もし戻らなければ、逃亡とみなされて「96」の存在を隠すために組織に葬られてしまうのだろうか。
そんなモグリの落ち着かない気持ちとは裏腹に、モグリ病院は人の出入りもなく静まり返っていた。
氷動の失踪を隠そうとしたモグリが、彼の病室のドアにぶら下げた「面会謝絶」のプレートをトイレに行く途中のカギヤが見てしまい、ショックで床に座り込んでしまった以外には。
氷動が入院中、彼が愛用しているオフロードバイクは盗難防止のため、モグリ病院のある倉庫内に運ばれて置かれていた。
モグリはそのことを意識が戻った氷動に伝えて、キーも私物と共に渡しておいた。
まさか「96」に追跡されて葬られることを知りながら、重傷の体で病院から逃亡するとは思ってもいなかったのだ。
その一方で、病室で氷動と会話したアザミは感じていた。
もともと命に未練がない奴ならば「96」からの逃亡もためらうことなく考えるだろう、と。
そこでアザミはモグリ病院からの帰り際に、マリネの車に積んでいた小型発信機を一つもらって氷動のバイクに仕掛けておいたのである。
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