【13】最後のキス

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 ガランとした広大な駐車場を通り抜けると、海のほうに向けてベンチが何台か置かれている。  洒落た街灯もあり良い雰囲気なのだが、さすがに平日のこの時間帯ではカップルどころか誰もいなかった。  街灯の明かりから外れた薄暗い一番左端のベンチの横にバイクを止めると、氷動はドサリと倒れ込むように深く座り込んだ。  走行中に痛み止めが切れたようだ。  腹部の傷の痛みに汗が吹き出す。  冷たい海風がありがたいと思いながら、氷動はしばらく目を閉じて乱れた呼吸を整えようとした。  だが、なかなか呼吸は落ち着かない。  汗は止まらず、体中が熱くなってきた。  痛みによる発熱か……いや、この感覚は……。  氷動はゆっくりと目を開き、少し離れて設置されている右隣りのベンチを見た。  街灯にぼんやり照らされながら、誰かが足を組んで座っている。 「……アザミ班長?」  するとアザミがゆったりと歩み寄ってきて、氷動の隣りに座った。 「よぉ」 「さすが『96』ですね……もう自分の居場所がバレるなんて……腹に発信機でも埋めましたか?」 「まさか」  アザミが楽し気に笑いながら続けた。
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