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「……楽になれますかね」
「どうだろうな。俺は飲んだことねぇから」
「……それもそうですよね」
おびえることも、ためらいもせずに氷動が錠剤を口に含むと、アザミがペットボトルの水を渡した。
氷動は軽く会釈をしてから受け取ろうとしたが、痛みで手に力が入らず汗で滑るため、上手くペットボトルを持つことが出来ない。
するとアザミ自らペットボトルの飲み口を含み、氷動を抱き寄せて唇を密に重ねて水を送り込んだ。
「ん……っ」
アザミの影響があったのだろうか。
氷動は、突如「欲しい」という激しい欲求にかられて、迷わず口内の水を飲み込んだ。
うまく飲み切れなかった水が、氷動の口の端から細い筋になって流れ落ち、顎から首を伝っていく。
口内の水がなくなった後は、そのまま深い口づけに変わっていた。
「……最後のキスだ」
そう囁いたアザミはハンカチを取り出し、こぼれた水をぬぐってやった。
映画で観たことがあるように、毒を飲んだら喉をかきむしって苦しみながら絶命するのだろうか。
それとも眠るように……。
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