【14】呪い

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 そんなある日、氷動と同じゼミの女子生徒が興奮したように声をかけてきた。  彼女は論文の資料として、過去に起きた大きな列車事故の関連記事を調べているのだという。 「ね、この写真の人!氷動くんとそっくりじゃない?」  そう言って彼女が見せた古く色褪(いろあ)せた新聞記事には、列車事故で亡くなった人々の写真が掲載されていた。  そしてある男性の写真から、氷動は目を離すことが出来なくなってしまう。  こんなに似ている人間がいるんだろうか。  まさか。  ……父さん?  両親は事故で亡くなったと聞いている。  それ以上のことは、成長すると共に聞くタイミングを逃してしまっていた。  写真の男性は「氷動」という名字ではなかったが、母方の祖母に引き取られて氷動を名乗っているので問題はない。  新聞の日付から、自分の父親だとしたら年齢も多分これくらいだろう。  しかしその中に氷動の母親の写真はなかった。  もしかしたらこの時はまだ生存していて、記事が掲載された後に亡くなったのかも知れない。  紙面に印刷された「重軽傷者多数」という文字を見ながら、そう氷動は推測した。  その日、帰宅した氷動は祖母にその話をしなかった。  どんな両親だったのか、聞きたい気持ちがなかったと言えば嘘になる。  しかし親代わりに大切に育ててくれた祖母に、実の両親の話をしては悪い気がして遠慮してしまったのだ。
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