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いよいよ大学四年生になるという時、
「君のお婆様が倒れた」
と、連絡を受けた氷動は教室を飛び出し、バイクで病院へ駆けつけた。
医師の説明によると、もともと弱かった心臓が発作を起こしてしまったとのことだった。
大きな病院の立派な個室のベッドに横たわる祖母と氷動が、二人きりになった時だった。
消えてしまいそうなか細い声が氷動の耳に届いた。
「……お前を遺していくのが悔しい」
このような状況になっても、祖母は自分の将来を案じてくれているのかと思った氷動は感動した。
そして自分のことは心配しないでいいと、祖母に声をかけようとした。
まさにその時、
「お前を殺したかったのに……」
弱々しくも力強くも聞こえる不気味な声が、氷動を突き刺した。
「……?」
一瞬、聞き違いかと思った。
しかし上品だった祖母が鬼のような形相をして自分をにらみつけているのを見て、聞き違いではないと確信した。
訳が分からずに呆然としている氷動に、苦しそうに声を絞り出しながら祖母は語り始めた。
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