【14】呪い

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 ユリエの持ち出した金品が尽きると、あっさりとミハルは出産直前の彼女を捨てて他の女と列車に乗り、警察からも逃れるべく別の土地へ向かった。  その途中で、あの列車事故が起こったのである。  ミハルの死を新聞で知ったユリエは裏切られた悲しみのあまり、当時二人で住んでいた小さなアパートの一室で自殺を(はか)った。  そこへ顏見知りの隣人が訪れ、施錠されていなかった玄関のドアを開けた瞬間、ただならぬ事態であると気づいたのだ。  すぐ救急車が呼ばれたが、彼女は搬送先の病院で息を引き取った。  ギリギリの所で取り上げられた赤ん坊と、今までの出来事を記した遺書を残して。 「ユリエが助かれば良かったんだ……それなのに、あの男にそっくりなお前だけが生き残った!」  そう叫んだ祖母は、氷動を憎々しげに(にら)み続けていた。 「私は……っ、お前があの男と同じ25歳になったら、殺すつもりだったんだ!そのためだけに育ててきたんだ!」  祖母が興奮して上半身を起こし腕を振り回したため、点滴の管が外れてしまい、真っ白なシーツに鮮血が飛び散った。 「よくも……よくも娘を!ユリエを!ユリエを返せえええぇっ!うわあああぁっ!」  もう祖母の目には、氷動はミハルとして映ってしまっているのだろう。  騒ぎに気づいた看護師たちが駆けつけ、氷動は病室を出された。
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