【14】呪い

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「現在の自分は25歳。どうやら祖母の呪いからは、逃げられなかったようです」  青白い美貌が、自嘲気味に薄っすら笑った。 「でも、この辺りから見る海は好きだった。ですから逃亡を理由に『96』に消されるなら、最期にもう一度だけ見ておこうと思って」 「海ったって、真っ暗でなんにも見えねぇじゃねぇか」  ベンチから立ちあがったアザミは、海に近づき柵に両手をかけた。 「まだ日の出には早いですからね」 「ほぅ。どんだけいいモンが見られるのか、俺もちょいと待ってみるか」  と、ジャケットの内側から、煙草と古びたライターを取り出した。  そして真っ黒に塗り潰された景色を眺めながら、慣れた手付きで火をつける。 「オメェのバアさんは、きっと長年に渡って自分自身に呪いをかけちまってたんだな」  氷動の心を軽くするために、都合良く調子を合わせている風には聞こえなかった。  きっと氷動の話を聞いて思ったことを、そのまま言っているのだろう。 「そして氷動。オメェはそんな目にあっちまったから、自分自身の命をどう扱えばいいのか分からなくなってたんだな」 「……」 「自分が生きることには無頓着(むとんちゃく)なのに、カギヤを必死に助けようとしただろ?」 「……でも『96』には、いらない感情なんですよね……」
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