【14】呪い

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  「俺が(しか)ったのは、オメェが、カギヤを信じなかったからだ」    ……カギヤさんを信じなかった?  自分の想像していなかった言葉を聞いたからか、アザミの影響であるのかは分からないが、氷動の体が熱くなる。 「表の社会じゃ人間関係を円滑にするために、社交辞令も遠慮も必要だ。言われたことと真逆の本音を察しなければならねぇこともある」  氷動はアザミに身を委ねたまま、穏やかに語られる言葉を聞いていた。 「だが、俺たちは無法地帯で生きているんだ。法律も警察も頼れねぇ。自分の身は自分たちで守るしかねぇ」  アザミが病室で言った「どうやらまだ表の世界にいた警官時代の感覚でいるようだな」という言葉を氷動は思い出す。 「とっさの状況で遠慮したり適当なことを言ったら、仲間同士の正確な意志の疎通(そつう)は無理だ。そんな無責任な発言を一つでもされれば、疑心暗鬼に陥っちまう」  アザミの口調からは、実際に体験したような重みが感じられた。 「カギヤは『先に行け』と言った。だがオメェが戻ってきたせいで計算が狂い、予定していなかった大怪我まで負わされ、重傷になっちまったんだ」  僕を信じて。僕も君を信じているから。  カギヤは調査結果を届けるように氷動に頼んだ時、確かにそう言った。
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