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「本当にアイツとは、最初で最後のキスになっちまったのが残念だぜ」
氷動を今までの彼自身と決別させるつもりで言った、アザミの言葉「最後のキス」。
しかし作戦完遂の頃には、さすがにアザミのフェロモンには慣れてしまっているだろうし、アザミの誘惑に乗せられないための対策も氷動自身考えるだろう。
「どうもこの場所にくると毎回欲求不満で終わるな。俺とは相性が悪いのか?」
モグリ病院には氷動が到着する前に、アザミから連絡を入れていたようだった。
氷動の姿を見るなりスタッフが駆け寄ってきて、詮索することもなく、彼をある病室のドアまで案内してくれた。
ノックしてドアを開けると、自分が今まで収容されていた二倍近くの広い室内にベッドが二台、左右の壁に沿わせてそれぞれ配置されている。
一番奥には、移動可能なテーブルや複数の椅子も置かれていた。
「氷動君!」
左のベッドを使用していたカギヤと彼の治療を終えたモグリ医師の声が重なり、病室内に大きく響いた。
「良かった……無事戻って来てくれて、本当に良かった……」
氷動を見るなり思わずカギヤは号泣してしまい、交換したばかりの包帯がびしょ濡れになってしまった。
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